第26章 眠り姫の物語
『でも、私は死ななかった。ある人が、呪いの効力を弱めてくれたから。
その魔法をかけてくれたのは…リリアだった。
彼は、何も悪い事をしていないのに、自分の命が失われるところだった。彼だって、王族を恨んでも憎んでもおかしくなったはずなのに…
私を、助けてくれた。
マレウスだって、私に呪いをかけた事をずっと悔いていた。そして何年も何年も、私の身を案じ続けて 影からずっと見守っていてくれた。
呪いを解こうとしてくれたり、私が困っていたら いつだって駆け付けて助けてくれた。
ここまで話せば、皆んな分かってくれるでしょう?
彼らは…本当は、優しいの。凄く優しい生き物なの。
魔法力が強いだとか、妖精族だからとか、何も関係ない。
心は人間と同じ。凄く、優しいの』
ローズは ただ一点、ある説明をあえて省いた。それは、アズール達の名前である。
マレウスと王族を憎しみ合わせ、城を襲撃した黒幕を口にしてしまえば、彼らは間違いなく罰を受ける。それは彼女にとって本意ではなかった。
きっと しつこく問い質されるだろうが、それは今ではなかった。
ステファンは、今それどころではなかったのである。
彼は、自分の勘違いでリリアを傷付けてしまった事に驚きを隠せなかった。
様々な思考が頭を巡る。
もし、自分がリリアを刺さなければローズも呪われる事はなかったのだろうか。
もし、マレウス達を初めから敬遠などせず、歩み寄る努力をしていれば…
しかし、すぐに頭を切り替える。
いま、ローズは目の前に立っていて。
真実を知る機会を与えてもらえて。
それならば、今 口にするべき言葉はもう決まっている。