第26章 眠り姫の物語
ピン と張り詰めていた空気が、少しずつ弛緩し始めていた。
もうどうして良いのか、何が正解なのか分からなくなったステファン。彼は、隣に佇むリア王妃に 困り顔を向けた。
いつでも優しい雰囲気を纏い、王の隣に控えているリア。彼女も、困ったように微笑んで言った。
「昔から、あの子は本当に頑固で。ふふ、一度言い出したら聞かない子だった。
何年経っても、何も変わってない。ローズはローズなのね…
私は、2人の話を聞いてあげたらいいんじゃないかと思います」
『お母様…!』
「……そうだな。2人の身に一体何が起こって、今こうなっているのか。知っておかなければならないのかもしれない」
ステファンはしぶしぶそう告げたが、実はリアに感謝していた。
2人の話を聞くよう提案して欲しいと、心の奥では思っていたのだろう。
すぐにローズとマレウスは、なるべく詳細な説明を始めた。
まずは、6年前のあの日…。この城が襲撃された時の事から。
あの襲来は、マレウス達の仕業ではなかった事。彼らは、その逆でローズを助けようとして城に現れていた事。そんなリリアを、ステファンが傷付けてしまった事を。
それが引き金となり、マレウスは憎しみに取り憑かれ…王家を恨むようになってしまったのだ。
そして、この国を地獄へと叩き落とした あの日へと話は続く。
ローズが、10歳を迎えた生誕祭での出来事である。
王家を憎むマレウスが、報復の為にローズを呪う。