第26章 眠り姫の物語
「まさに、その通りだな。返す言葉もない。
僕は…、弱かった。だから、自分を守る為に 周りを傷付けてしまった。
今さら、と思われるかもしれないが…。後悔している。
本当に 申し訳なかった」
まさか、彼が頭を下げるなどとは 誰も予想していなかったのだろう。
群衆のざわめきは、より大きくなる。
そんな様子を眺める、オクタヴィネル一行。
「あんなふうに頭を下げるなど、やり方がスマートじゃありませんねぇ。僕ならもっと上手くやる」
「そりゃアズールだったら、もっと小狡くて汚い手 使うんだろーけどさぁ」
「…褒め言葉として受け取っておきましょうか」
「褒めてねーし。どんなけプラス思考」
「まあまあ。
しかし…あの2人には、ああいった素直な方法が 1番なのかもしれませんよ?」
事実、ジェイドが言うように、マレウスの心からの言葉は 少なからず群衆に届いている様子。
やはり否定的な考えの者。彼への認識を改めようという者。両者が混在しているようだ。
しかし…当の国王は、残念ながら前者である。
険しい顔のまま 彼が静かに手を挙げると、控えていた衛兵が広間に現れた。
そして、迷う事なくマレウスを取り囲んだ。
一部始終を近くで見ているリドルは、自分にしか聞こえないくらいの声で呟いた。
「さぁ、どうする。
今までと同じように、力を振りかざすか。
それとも…」
「こんな事くらいで、貴方達は止まりはしないのでしょうね。
ふふ。お手並み拝見するとしましょう」
リドルとは距離を置いた場所で、成り行きを見ているアズールもまた、小さく呟いた。
仲間達は、見定めている。
マレウスの 覚悟を。