第25章 全てを 超えて
そしてリドルは、マレウスを睨み上げ言い放つ。
「女性に、これ以上の先の言葉を言わせるおつもりかい?」
「…気づいてくれ、人の子らよ。
結んではいけない縁 というものもある。それこそが、我らの縁なのだ」
悲痛な声で言葉を紡ぎながら、ゆっくりとローズの方へと歩み寄る。そして、今にも泣き出しそうになりながら 愛しい人を見下ろした。
「すまない。僕が、お前と同じ人間であったならば…どれほど良かっただろうな」
『っ、私は…そんな言葉が欲しいわけじゃ、ないのよ。マレウス』
人とは、あまりに簡単に流される。時の流れに。
今はこうして、息が掛かるほどに近くにいようとも。
甘い匂いが漂ってくるほどに近くにいようとも。
どうせローズも、すぐに僕を置いていくのだろう。
僕だけを、置き去りにするのだろう。
「僕にとって、人は…儚すぎる。弱過ぎる。
耐えられる気がしない。たった数十年後、お前がこの世を去ってしまう瞬間を目の当たりにするなんて」
『……マレウス』
悲しげな表情のマレウスに対し、ローズは何とも強い視線を男に向けた。その力強い顔付きに、彼は思わず半歩 退きそうになったほど。
そんな表情で放たれる言葉は、まさに苛烈。
『弱いのは貴方よ。
マレウスは、私から逃げるのね』