第25章 全てを 超えて
「僕が…弱いだと」
自分より、遥かに儚く弱い生き物だと思っていた人間に、面と向かってそんなふうに言われるのは初めての経験であった。
しかし、不思議と不快ではない。
『貴方に覚悟が無いのなら、どうぞ そのまま逃げれば良い。きっと、間違いなくそちらが楽な道だから。
でも、これだけは覚えておいて。貴方が尻尾を巻いて逃げ出した相手は、厳しい方の道を行く “ 選択 ” をしていたことを』
「……選択」
ぽつりと呟いたマレウスに、まず言葉を返したのはデュース。
「たしかに 人の一生なんて、妖精族にとっては短くも儚いものなのかもしれない。
でも…短い人生だからこそ 人は必死に生きてる!
自分の人生を より幸福にする為に、道を選択して、何かを愛して何かを捨てて!そんなふうに生きる人は…あんたが考えるより弱くないぞ!」
「おっしゃる通りだよデュース。
短い人生の中、ときに訪れる “ 選択 ” の機会も…。たしかにキミ達よりは少ないのかもしれない。
でも、数が少ないからこそ その決断は時に一生重く 乗し掛かる。それを一生背負いながら生きる人は…
果たして本当に、弱く儚いとお思いかい?」
「ローズは今まさに、その大きな節目に当たる “ 選択 ” の時ってわけだな。まぁ、もうとっくに彼女の方は答えが出てるみたいだが…
でもまさか、強くて高尚な妖精族様の方が逃げ出すとは。
あぁ すまない、気にしないでくれ?どんな選択をするかは、個人の自由だからな」
デュースに続き、リドルとトレイも言いたい事を言ってみせた。
彼らの言葉を受けたマレウスは…笑った。