第25章 全てを 超えて
『私…眠っている間、夢を見ていたの。
深い森を、たった1人で歩いている夢。どっちへ行けば森を抜けられるのか、方角も出口も分からない。不安で、泣き出しそうだった。
でもね、そんな時 皆んなの声が聞こえた気がした。
大丈夫だよ、こっちだよ って。
私の事を待っているから…大切に思っているから、だから早く帰っておいでって。
だから、何も出来なかったなんてこと、全然無い。デュースの声も、ちゃんと聞こえてたよ。
ありがとう。きっと皆んながいたから、私は目覚める事が出来た。きっと誰か1人でも欠けていたら、私は今も眠ったままだった。
皆んな…本当に、ありがとう』
今、再びこうして皆んなと話す事の出来ている環境に、最大限の喜びを感じる。
そして、それに出来る限りの感謝を込めて。今の気持ちを、ローズは素直に言葉にした。
「ぅ…、そっか、良かった…。ローズ、僕もまた、お前に会えて良かった!凄く、嬉しい」
「ローズ。ボクも、嬉しいよ。ここへ帰って来てくれて、ありがとう」
「あぁ。またお前の笑った顔が見られて良かったよ。こんな事を言うのは柄じゃ無いが、今はそれだけで胸いっぱいだ」
リドルもトレイも、ローズの側まで歩いて行き、喜びを分かち合う。まるで数年ぶりに再会を果たした恋人の様であった。誰がどう見ても、心温まる光景。
マレウスは、それを遠目から見つめていた。彼も、彼らの再会を心の底から喜んでいた。しかし同時に、彼の胸には寂しさが訪れた。
彼にだけ、聞こえていたのだ。
近付いてくる、ローズとの別れの足音が。