第24章 誠意の欠片も感じられない謝罪
——コンコンコンコン
「…………」
マレウスは、それなりに この城に長く住まっているが、こんなにも丁寧で規則正しいノックを聞いた事はなかった。
だから分かった。リリア達以外の者が、自室を訪ねて来たのだと。
たとえ誰が訪ねてこようとも、会う気など毛頭なかった彼は、返事などしない。
ただ、糸の切れたマリオネットのように 専用の椅子に座っているだけ。虚ろな目を、扉へと向ける事さえしなかった。
バァァン!!
けたたましい音と共に、扉は内に開かれた。
そうまでされて、仕方無く彼は扉へと視線を投げる。
そこに居たのは…フロイド リーチ。
気怠そうにポケットへ両手を突っ込んでいる。しかしその瞳は、怒りからか凶暴な色をしていた。
マレウスは、彼についての知識をそこそこ持ち合わせていた。
ローズにつきまとい、森の家へとよく出向いていた。北の深海へローズを連れて行った。それから…
10年前、ローズの住む城を襲った男だ。
そう。マレウスは、知っていた。彼らの悪行を。自分を使い、皇族と憎しみ合わせた事を。
しかし…
彼にはもう、怒る気力すら残されていなかった。
「おやおやフロイド…そんなふうに扉を開けるものじゃないですよ」
「だーって、いつまで経っても返事なかったし」
「はいはい、お説教は後にして下さい。とにかく、面倒な用事を早く終わらせてしまいましょう。いいですね?
はい、せーの」
「「「どうも すみませんでしたー」」」
マレウスはそれなりに長く生きているが、こんなにも心のこもっていない謝罪は、未だかつて耳にした事はなかった。