第24章 誠意の欠片も感じられない謝罪
「く、くはっ!はっはは!おぉ、驚いておる慄いておるのぅ。いやぁ、愉快愉快じゃ」
リリアが腹を抱え、大口で笑うのを見てから気が付いた。自分は揶揄われたのだと。
立腹と安堵が半々ずつ。そんな複雑な感情で、溜息を吐き出した。
「はぁ…悪趣味な人だ」
「無実な者を罠に陥れ、他人と憎しみ合わせるように計略した奴と…さて、どちらがより悪趣味かのぅ」
真意の読み取れない笑みを貼り付ける2人。そんな彼らの視線が交錯する。
リリアの妖艶な顔を、暖炉の明かりが怪しく照らしていた。
「お主らのせいで死にかけた わしじゃが…。まぁ今更、戦犯が誰だったか などとは言うまい。どうじゃ?そう考えれば 少し揶揄われたくらい、安いもんじゃろ?ふふ。
ところで、お主はマレウスに会いに来たのであろう?奴の自室なら、ほれ。そこの大階段から最上階まで上がってすぐじゃぞ」
「まさか、ご丁寧にそちらの方から居場所を教えて頂けるなんて思ってもみませんでしたよ。
よろしいのですか?もしかすると僕は…貴方の大切になさっているドラゴンに、危害を加えるかもしれせんよ?」
「くふふっ!危害か!それはまた愉快な。危険が及ぶとすれば、それはお主達の方じゃ。せいぜいドラゴンの尾っぽを踏んで怒りを買い、焼き殺されんように気を付けよ。
それに…正直、奴にはわしも手を焼いておってな。何を言っても一向に部屋から出てこようとせん。連れ出してくれるというのなら、こちらとしても万々歳じゃ」
再び椅子に腰掛けたリリアは、すっかり冷め切ってしまった紅茶には口を付けず。男性にしては細く綺麗な指で、ティーカップの縁をなぞる。そして茶色の液体に、微かに広がった波紋に視線を落として言った。