第24章 誠意の欠片も感じられない謝罪
「それはそれは!素晴らしいご趣味なのですねぇ。いや、城門に飾られてあるガーゴイルなども拝見致しましたが、趣がありましたよ。
きっと当主のセンスが良いのですね」
「お主、さっきは辛気臭いと言うておったぞ?」
リリアは半目を作ってアズールに向けた。
そんな様子も、どこか楽しそうである。おそらく、リリアに攻撃の意思はない。
そう感じたアズールは、徐々に核心に触れる質問を投げる。
「……どこぞの…美しくて優しい、馬鹿正直な性格で、さらには男を見る目のない姫が、長い眠りについたそうですよ」
「くふふ。どこぞの、などと言う割には他が具体的じゃのぅ」
「聞くところによれば…彼女を眠りに陥れたのは、世にも恐ろしいドラゴンだとか。
そのドラゴンは…姫が眠りについた事実を、はたして知っているのでしょうか」
「…知っておるから、悲しみ怒り…踠き苦しんでおるのではないかの」
暖炉の火が、パチっと爆ぜる音を立てた。
「ドラゴンには…心があると?
悲しみや怒り、苦しみなどと言ってしまえば、それはまるで “ 人 ” のようだ」
「お主が妖精族をどう捉えておるのかは、わしの知るところではないが…。
昨日までの安寧が、明日もただ続いていけば良いと 希(こいねが)ってしまう。その気持ちに “ 人 ” も “ 妖精 ” も、関係なかろうて。
終わりがそこまで近付いてきていると、分かっておってもな」
「…はっ。自分で終わりを招いておいて、よく言いますね」
「……知っておるか?
ドラゴンはな、比較的大人しい性格をしておるのじゃぞ?まぁ、感情の起伏が激しい部分があるのは否定出来んが。
その優しいドラゴンが、牙を剥くのには それなりの理由があってのう。
そう、例えば…
どこかの愚かな魚風情が、ドラゴンを誑(たぶら)かしたとかな!」
「っ!!」
リリアは、叫ぶと同時にアズールを最大限威嚇した。
カッと見開かれた目。口元で光る鋭い刃の様な牙。
怒れる姿は まさに人外。その姿や まさに苛烈!
アズールは咄嗟に身構えた。