第4章 運命に引き寄せられた出会い
『…………』
「…………」
オーロラとマレウスの耳は、一切の音を受け付けていなかった。
ただ、相手の姿を自分の瞳に映していた。
10年ぶりに、2人は相手の姿を見た。
オーロラは勿論その時の事は記憶にないが、マレウスは鮮明に覚えていた。
この気持ちを…なんと呼ぶべきか。
2人は必死に、今の自分の気持ちに向き合っていた。
雷に打たれたとか、体に電気が走ったとか。
そんな言葉で表してしまうには生温い。
“出逢うべくして出逢った” 言うなれば、これは
“運命だ”
2人は互いに確信した。それを証拠に…
オーロラとマレウスの頬には、熱い物が流れていた。
『どうして…?どうして、私は泣いているの』
「なんだ…これは、」
2人はその涙を拭うどころか、瞬きすらも出来ない。
未だに相手から目を逸らせないでいた。
「マレウス…」
リリアはそんな彼の姿を見て、驚きはしたものの。
なんとなくこうなる事が分かっていたように、彼の名を静かに呼んだ。
(…は?なにそれ)
面白く思わないのは、フロイドだった。
自分がどれだけ怖がらせても、大切な人を傷付けても、宝物を奪っても。
潤みすらしなかったその瞳から、大粒の涙をポロポロと零しているのだ。
そんなオーロラを見て、平常心ではいられなかった。
(…フロイド?)
彼の異変にいち早く気が向いたらジェイドは、小さく名を呼んだ。
しかし、そんな兄弟の声も彼を止める事は叶わない。
フロイドは、自分が生成出来る限りの水を出し。それを凍らせて氷の刃に変える。
そして放心状態のマレウスに向けて放つ!
(!?)
突然攻撃をしかけたフロイドに、驚きを隠せないジェイド。
どんどんマレウスへと迫る刃。しかし彼は微動だにしない。
その時、横から大きな業火が現れる。それはあっという間にフロイドが出した氷を溶かした。
ジュウっという音共に、真っ白な水蒸気が部屋を満たす。
「不意打ちとはのう…。
随分と、躾のなっていない小童じゃわい。
どれ。ワシがひとつ、灸を据えてやるとするか」
リリアは、再び手の中に炎を作り出す。
さきほどのフロイドの攻撃を相殺した時よりも、遥かに強い力。
そのあまりに凄まじい魔法力に、フロイドとジェイドは青ざめた。