第4章 運命に引き寄せられた出会い
さすがにフロイドの頭も冷えた様子。
以前は、マレウスと自分の力はどのくらいの差があるのだろうか。
などと呑気に考えた事もあった。しかし今確信した。
レベルが違う。いや、もはや次元が違う。
マレウスの側近であるリリア1人に、簡単にやり込められてしまっているのだ。
ジェイドとフロイドが、結託して戦っているというのに。全く歯が立たない。
「ふふふ、どうしたのかのう。さっきの元気はどこへ行ってしまったんじゃ?」
(…なんという、規格外な人だ)
ジェイドは、リリアに向けて “木” の魔法を放つ。
するとリリアは当然、木に優位性の高い “火” の魔法を放った。
そこですかさずフロイドが、火に強い “水” 魔法を放つ。
(アハっ!もらったぁ)
今リリアは火属性のはず。それなのに…
フロイドに “木” の魔法を繰り出したのだ。
(で、でたらめじゃん…!
左手で火、右手で木。そんな事可能なわけ?)
“水” に強いのは“木” 。逆に追い詰められてしまうフロイド。
リリアの生成した葉が、音速で走りフロイドの腕をかすめる。
「ま、こんな事が出来るのも
全ては年の功かのう」
リリアはこの時、油断していた。
可愛い魔法士2人と、まるで遊んでいるような気になってしまっていたのだった。
本当の脅威は、別の方向から近付いて来ていたというのに。
ギリギリまで気が付かなかった。
自分の主人、マレウスの背後に忍び寄る影に。
「マレウス!!」
ようやくそれに気が付いたリリア。
もはや魔法を生成する余裕など、皆無だった。
咄嗟に、マレウスと影の間に自分の身を滑り込ませる。
刃が肉を切り裂く、身の毛もすくむような嫌な音が
静まり返った部屋に放たれた。