第23章 呪われし姫の帰城
「最後は、ボクが行かせてもらおう」
そう言って、壁から背を離したのリドル。そんな彼を、アズールが驚いた様子で見つめた。
「アズール、数のうちにカウントされてねぇの可哀想ー」
「まぁ、既に木っ端微塵にフラれてますしね」
そんな双子の声を 一応は拾いながら、リドルはドアノブに手をかけた。
一歩。また一歩と、ローズとの距離を詰めてゆく。
縮まる距離と比例するように、リドルの鼓動は早くなってゆく。
彼女の前で歩みを止める。そして、彼は片膝をついて 頭を下げる。
それは、まるで今この時が 2人の初対面であるかのような、恭しい挨拶であった。
「…ローズ。まずは想いを告げる前に、キミにお礼が言いたい」
彼とて他のメンバー同様、彼女との思い出は語り尽くせない程に持ち合わせている。しかし、やはり特筆すべきは…
リドルを救いたいという一心で、ローズ自らがハーツラビュル城に乗り込んだ事ではないだろうか。
「ボクは、キミに出会うまで…ただの人形も同然だった。でもね、あの時…あの瞬間から、ボクは人になったんだよ。
絶対に一生忘れない。潰れそうに震えるボクの目の前に、キミが現れた…あの光景を。
ボクが自由に羽ばたける翼は、ローズがくれた。
きっとキミは、これがどれほど凄い事なのか お分かりでないだろうね。
今のボクがあるのは…全てキミのお陰だと言っても過言ではないんだよ?」
自分を形作ったもの。それはローズであると、リドルは自信を持って言い張れた。
それくらい、彼女の存在が彼の根底にはあって、息衝いていた。
「ボクを、鳥籠の中から救ってくれて、ありがとう。
今度は、ボクが…ローズを救いたい。
何に代えても。何を犠牲にしても。
それくらいボクは…キミを、愛しているから」
リドルは立ち上がり、ローズの顔の横に手をついた。
「…このボクに、二度も告白をさせる女性なんて
きっと この世で キミだけだ」
突いた腕を、ゆっくりと曲げて…。リドルは、ローズへ口づけを落とした。
しかし。
ローズは目を開かない。