第23章 呪われし姫の帰城
全員が、口を噤んだ。
この場で全てを説明するには、事情はかなり立て込んでいる。
ローズを眠りから覚ます方法は、愛し合う者との口付け。真実の愛が必要なのだ。
そして、その相手は 残酷な事に 許嫁であるフィリップではない。その事実を、彼以外の全員が理解していた。
しかし、それを口にするのは どうしても憚られる。
「——おい、お前ら何黙ってんだよ。なんとか言えよ!!何か方法があるのか!?ローズを起こす方法があるのかって聞いて」
「うっせぇ なぁ!」
フィリップは、愛する者を救いたいが為に苛立っていた。しかし、彼以上に苛立っている男が ここにいた。
それは、フロイドである。
イライラしていたところに、フィリップが大声で叫びまくし立てるものだから、延髄目掛けて手刀を落としてしまったのだった。
あまりにも自制のないその奇行に、その場にいた全員が目を剥いた。代表して言葉を発したのはトレイ。
「お、おいおい。いくらなんでも、それは…
自分のところの王子を落としたら、さすがにまずいんじゃないか?」
「まぁ、大丈夫でしょう」
「えぇ。なんとでもなりますよ」
「…お前達はフロイドに甘いな」
自国の王子が白目をむいているのに、アズールとジェイドはケロリと言ってのけた。
そして、意外な人物もフロイドを支持した。
「…いや、フロイドの行動は 間違ってないよ」
「リドル!?」
「大切な人が、いつ起きるかもしれない眠りについてしまった。
こんな悲しい思いをするのは…ボク達だけで十分だ。そうは、思わないかい?」
悲壮な色を含んだ瞳を 静かに伏せ、彼はさらに続けた。
「皆んな。ボクに考えがあるのだけれど。協力、してくれないだろうか」