第23章 呪われし姫の帰城
リドルの提案とは、城中の人間を全て眠りにつかせる事だった。
全て、である。
王や王妃を始めとする、城主も。政を担っている宰相や大臣も。常備兵もメイドも料理人も。さらには庭師や厩番。誰一人として例外は無く、全員が眠りに落とされる。
この日、ローズと共に城中の人間も眠りについたのである。
多くの人間を魔法で眠らせるのは、かなりの労力が必要であり、時間もそれなりに要したが。6人で協力する事でなんとか やり遂げた。
ほんの少し前までは、活気に満ち溢れていた城内は、異様なほどに静まり返った。長い歴史のあるこの城が、ここまでの静寂に包まれた事は未だかつて有りはしない。
そんな中、優秀な魔法士6人のみが 悲しみに暮れていた。
彼らは、ローズを自室のベットへ寝かせると、誰からとも無く廊下へと出たのだった。
「デュース。いい加減に、その涙を止めたらどうだい」
「ぅぅ…、っく、でも、俺…悔しくて…!」
「…そうだな。俺も悔しいよ。どうして目を離してしまったんだろうな。
部屋に閉じ込めてさえおけば、それだけで安心だ なんて。どうして思ってしまったんだ」
トレイは、そっとデュースの背中に手をやった。そんな様子をずっと静観していたオクタヴィネルの3人は冷静に言った。
「皆さん、揃いも揃って情け無い姿ですねぇ。
何か…お忘れじゃありませんか?」
「アズールの言う通りです。
ローズさんは、死んだわけではないのですよ?」
「そーいうことぉ。じゃ、オレは行ってくっから。お姫様の目ぇ覚ます気のねえ奴らは、そうやってずっと泣いてれば?」