第23章 呪われし姫の帰城
地に座り込んだデュースが、ローズを抱き上げて すすり泣く。そんな光景を、魂が抜けたように眺めるリドル。
2人は気づいていないだろうが、かなりの時間が経過していた。
そこへ、招かれていない人間が現れる。さきほどリドルと相対した番人であった。
「リドル王子様…ですよね?あの、このような場所でどうされ」
番人の言葉は、そこでぷっつりと途切れた。リドルが、彼に最後まで喋らせる事なく 眠りにつかせたのだ。
ローズに視線が向かう前に、強制的に魔法で眠らせた。まるで そうするのが決まっていたかのような、淀みのない動きであった。
リドルは、使ったばかりのマジカルペンをギュっと握りしめる。それから、苦々しく顔を歪ませた。
そこへ、他の城壁塔にローズを探しに行ったメンバーも ここへやって来た。
肩で息をする5人は、その地獄絵図に釘付けになった。
崩れ落ちたデュースに、その腕に収まったローズ。肩を落としてそれを見つめるリドル。静かに寝息を立てる番人。
トレイは、悔しそうに顔を背けた。アズールは、額の汗もそのままに固まっている。普段は飄々としている双子でさえ、呆然と立ち尽くした。
よろよろと、フィリップがデュースの前に腰を抜かすように座り込んだ。
そして手袋を取り、ローズの頬に指を滑らせる。
「ぅ…っく、フィリップ…王子…」
「……温かい。息を、してる。
どう、なってる。ローズは、生きてるのか?呪いにかかれば、死ぬんじゃなかったのか」
フィリップは、未だ知らないのだ。
ローズに降りかかった呪いの効力は、リリアによって弱められた事を。