第23章 呪われし姫の帰城
フィリップとジェイドは、長い脚を存分に使って前へ前へとぐんぐん進む。
そんな2人に、アズールは完全に遅れを取っていた。
「は…っ、ちょ ちょっと待」
「待てるわけねぇだろ!お前は部屋で待ってろ!」
「アズール。ここは僕達に任せて下さい」
「い、嫌だ!僕も、一緒に…っ、
く、くそ!ここが陸では無く 海中だったら!」
「……貴方、海の中でも大して変わらないじゃないですか」
ジェイドの放った、容赦の無い言葉が原因なのかは定かで無いが。アズールはついに両足をもつれさせ、派手に転倒した。
顔を上げると、もう2人の姿は豆のように小さくなっているのであった。
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トレイは、城壁塔の詳しい場所を心得ていなかった。
が、フロイドの足取りは自信に満ちていた。そんな彼の背中を、頼もしいとさえ思いトレイは追っている。
「フロイド。あとどれくらいだ?」
「…何が」
「何が って。城壁塔に決まってるだろ、半分は来たか?」
「知らね」
「……おい、まさか。お前 位置を知らないまま走ってたのか!」
「知らないわけじゃねぇし。ちゃんとカンで向かってんだけど〜」
「それを知らないって言うんだけどなぁ…。とは言え、確認しなかった俺も悪いか。
仕方ない。こうなったら一度止まって、誰かに聞」
「そんな暇ねぇから」
フロイドは、その時目に付いた人間を肩に担ぎ上げた。運悪く捕まったのは、まだ10代前半であろう少年の従者。
少年は、突然の事に悲鳴を上げた。それもそのはず。猛スピードで走る190センチを超える大男に、いきなり担がれてしまったのだ。振り落とされまいと必死になって、フロイドの髪の毛を鷲掴んだ。
「ひ、ひぃっ、な、何!?降ろして下さ…!は、速いっ、高い〜〜っ」
「城壁塔ってどこ?」
「じょっ…!えっと、それなら知ってます!道案内でも何でもするんで、とにかく降ろし」
「だめ。ギューって締められたくなかったらぁ、このまま案内すんの」
トレイは、少年を気の毒に思いながらも そっと目を伏せた。