第23章 呪われし姫の帰城
彼らが、暖炉の奥へと道が通じていると気が付くのに、そう時間は要さなかった。
一番最初に、その異変に気が付いたリドル。頭よりも体が先に反応して、その身を入口へと滑り込ませようとした その瞬間。
まるで何事も無かったかのように、それはただの暖炉へと姿を戻してしまった。もうどう見ても、何の変哲も無い暖炉にしか見えない。
無情にも、目の前で閉ざされてしまった穴…
皆んな、わざわざ言葉にはしなかったが理解していた。この奥に、ローズが足を踏み入れてしまったのだと。
リドルの後ろに立っていたフィリップ王子は、その目に映していた。消えた入り口から、上へと続く石造りの階段が伸びているのを。ほとんど明かりのない、あの殺風景な長い階段…。
彼は、すぐに答えを導き出した。
「城壁塔だ!」
「確かかい?!」
「あの場所がこの城の中だとしたら間違いねえ!」
「王子!この城に城壁塔は何本ありますか」
「3本!一番遠い所には俺が行く!」
アズールが 城壁塔の数を確認したのを聞いた彼らは、すぐに3手に分かれて行動する算段を立てた。
まずは、フィリップ それにジェイドとアズールの3人。後はリドルとデュースの2人。最後はフロイドとトレイの組。
3組は、ほとんど同時に廊下へと飛び出した。そしてそれぞれの方向へ駆け出して行った。
彼らが猛スピードで廊下を駆け抜ける姿に、すれ違う従者達は一様に驚いた。皆が足を止め手を止めて、全員が後ろを振り返った。そして顔を傾けた。
まさか 自分達の姫の窮地であるなどとは、宮仕えの者達は知る由も無いのである。