第23章 呪われし姫の帰城
7人がローズの姿がないと気付いて騒然としていた その時。
彼女は未だ、謎の光を追っていた。
暖炉の中に突如現れた道。そこを潜ると、階段に繋がっていた。その先には光は無く、ただ 密度の濃い暗がりが重なり合うように奥へと続いていた。
彼女は知る由もないが、今登っているこの場所は 城壁塔。細長い塔を、ぐるぐると階段が遥か上まで続いている。
そこはとにかく暗く、普段は番人しか訪れる事はない。ローズは左手で壁を伝って上へ上へと登っていく。いま頼れるのは、僅かばかりの燐光のみ。
淡い光の玉は、その光を強めたり弱めたりしながら、彼女を上へと誘ってゆく。
今はもうローズの目に、涙はなかったが光も無い。意識ははっきりとしているのか、はたまた 何かに乗っ取られているのか…それを読み取る事は出来ない。
瞬きすらも忘れているかのようであり、表情はまさに無であった。
そんな彼女の前に、ついに現れる。
『 』
何の反応も示すことは無く、ローズは “ それ ” に近付いた。
そう…。
糸車である。
漆黒の訛りで出来ているかのような、禍々しいオーラを纏ったような糸車。カタカタと音を立てて独りでに糸を紡いでいた。
彼女がずっと追いかけていた黄緑色の光は、その糸車のつむに ひたりと止まった。
ローズは、そっと 先端へ指を伸ばした。ギラリと鈍い光を放つ針。
そこへ触れる少し前、彼女はほとんど思考の働かなくなった頭で、ぼんやりと こんな事を考えていた。
“ もしかすると、マレウスの呪いは…
私と貴方を引き裂く物では、ないのかもしれない。
むしろ、今まで呪いだと恐れていたこれは…
私とマレウスを繋ぐ 絆 なのではないか ”
彼女は、針に 指の腹を乗せた。