第23章 呪われし姫の帰城
ハーツラビュルの面々は気付きはしなかったが、フィリップとアズールを包む空気感が変わっていた。
それは、アズール達が国々への侵略から手を引いたからである。勿論、ローズの命を狙うのも。ぴたりとやめた。
元々、フィリップ王子はアズール達を疑っていた。しかし、怪しげな計略から一切合切手を引いたアズールは、優秀な人材と成ったわけである。自国の勢力の拡大を図っていたヒューバート王だけは、肩を落としたらしいが…
リドルがアズール達を睨み続ける中、トレイはなんとか話題を変えようと試みる。
「で、フィリップ王子。ヒューバート王のお身体の調子はどうなんだ?今日はいらしてるのか?」
「ん、あぁ。すっかり元気だぜ。今だって、ステファン王と前祝いだっつって酒飲んでら」
「そ、それは随分と気が早いな」
「いやいや!んな事より!!
ローズ、中にいるんだろ?帰って来たんだよな」
その言葉に、リドル、トレイ、デュースの肩が跳ねる。
その様子を見たフィリップ達は、嫌な違和感を抱かざるを得ない。
「…おい、なんだよ。俺はもう6年も会ってねぇんだぞ。早く会わせろよ。部屋にいるんだろうが」
「いるにはいる。でもね、ボクは会うのをお勧めしな」
「お姫様ーー!おーい寝てんのー?」
フィリップとリドルが話している間に、なんとフロイドは扉をノックもなしに バーンと開け放つ。
呆気に取られているのを良い事にアズールとジェイドも “ お邪魔しますよ ” などと、呑気な声を掛けながらぞろぞろ入室する。怒声を上げながらフィリップがそれに続いた。
少しの間、残された3人は顔を見合わせていたが、ややあってから結局は全員入室。
部屋に全員が揃う。それから間もなく、フロイドが背中で呟いた。
「…で?お姫様、どこ?」
珍しいフロイドの真剣な声色。そんな声が、この仄暗い部屋に やけに響いた。