第23章 呪われし姫の帰城
名を呼ばれたリドルは、ほぼ無意識的に声の方へ顔を向ける。そこにいたのは…
オクタヴィネル国の第一王位継承者である、フィリップ王子であった。
そしてその後ろには、リドルにとって忌々しい3人の姿も。アズールと双子である。
4人は ぞろぞろと廊下の真ん中を歩いて来る。真っ白な王族衣装を纏う王子に、190センチの男が2人だ。嫌でも目立つ。廊下を行く使用人達は、誰もが恭しく頭を下げて道を譲った。
目立たないよう心掛けていたリドルは、怒りを隠さず睨みつける。トレイとデュースはそんな彼の横で、顔を見合わせて苦笑いをするのだった。
「フィリップ王子!廊下で人の名前を大声で叫ぶでないよ!」
「は?別にいいだろ、そんなのはどうでも。んな事より」
「金魚ちゃーん!相変わらずピチピチ跳ねてんねぇ」
「これはこれはリドル王子!どうもご無沙汰しております。この度は、無事にローズさんをここまで お連れしたとのことで。いやぁ、素晴らしい働きで!」
「っ、…アズールにフロイド!!よくもボクの前にその顔を出せたものだね!というか、どの口でそれを言っているんだい!!
当然、首をはねられる覚悟は出来ているのだろうね!?」
「な、なんだ お前ら…リドルに何かしたのか」
「ふふ、王子は どうぞお気になさらず。些細な事ですので」
「些細な事…?よくもそんなふうに言えたものだよ!ジェイド、キミも度胸がおありのようだ…。こうなったら3人まとめて首をっ」
「落ち着けリドル、な!!フィリップ王子も、うちのを煽らないよう3人に言ってくれ!」
「もう無茶苦茶だ…」
今にも3人組に飛びかからんとしていたリドルを、トレイとデュースがなんとか なだめる。
フィリップは、そんなリドルの様子を首を傾げて見ていた。
彼は知らないのだ。3人がリドルを眠らせ、その間にローズを深海へと連れ去った事など。
だから、いつの間に自分の従者とリドルが親しくなったのだろうか?と不思議で仕方なかったのだった。