第22章 真実の愛はディアボリック
トレイは、なんとかマレウスの体の自由を奪っている。
と、思っていたのだが。どうやら そうでは無かったらしい。
マレウスは、いとも簡単に拘束から逃れてみせた。まずは右腕、次に左腕。と、軽く力を入れただけで 巻き付いていた木の枝は糸屑のように引きちぎれた。
その様子に、驚くより早くリドル達へと声を上げるトレイ。
「っ、あんた本当に滅茶苦茶だよな。
おい!早く逃げろ!」
「いや、お前達は逃げる必要などない。僕の方が、もうここに留まる理由はなくなったからな」
『っ!!』
「…ローズ」
『っ、マレウス!マレウス!!待っ』
マレウスは、最後にローズの名を呼んだ。それ以外は、何も言葉を残さなかった。
ただ、悲しい笑顔だけを残して…。そして、その場から煙のように姿を消したのだった。
その笑顔はまるで、ローズに感謝をしているように見えた。
幸せな時間をくれて、ありがとう と。そう言っているように、彼女の目には映ったのだった。
ローズは、その場で泣き崩れた。力の限り叫びながら、3人の視線も意に介さずに、泣き叫んだ。
ここまで取り乱す彼女を、3人は見た事がなかったので狼狽した。
ローズの悲しみに呼応するように、ついには空までも泣き出してしまった。
丸まった背中に、容赦なく雨の粒が叩き付けられる。
リドルは、そんな彼女の背中に自分のマントを掛けてやる。そして優しく肩を抱いた。
3人は、悲壮な彼女を見て悟らざるを得なかった。
ローズが、誰を想っているのかを。