第22章 真実の愛はディアボリック
「覚悟は、出来ているか」
『……か、くご』
「以前、僕は言っただろう。
もしも目の前に、お前に呪いをかけた者が現れた時…
そのナイフで心臓を、ひと突きにする覚悟をしておけ と」
『………い、や』
「何を迷う。僕を殺せば、お前の呪いは解けるかもしれないぞ?
さぁ、今がその時だ。
やれ、ローズ。僕の心臓は、ここだ」
マレウスは、ナイフの切っ先を自らの心臓の位置へ持って行く。
ローズは、極度の緊張から手が硬直してしまっている。力を緩めて それを手放す事が出来ない。
彼の胸に、僅かに先端が触れる。そこから、また黒煙があがる。
ローズは、そこで限界を迎えた。
精神はもう耐えられなかったのだ。
彼女は叫んだ。心の奥底から悲鳴を上げた。
すると、まるでその悲鳴に応えるかのように助けが現れる。
リドルとトレイが、その場に現れた。
マレウスの腕に、シュルシュルと木の枝が生き物のように巻き付いて 体の自由を奪う。
その隙にリドルは、ローズとデュースの元に駆け寄った。
「ローズ、デュース。遅くなったね」
「ぅ…、リドル先輩…、ローズが」
『…ぁ、……ぁぁ』
「っ、ローズ!ボクの声が聞こえているかい?ローズ!」
「リドル!2人を連れて少しでも早くここから離れてくれ!
悪いが、長く持ちそうにない!」
トレイは、背面に庇った3人に叫んだ。
目の前の脅威に相対しながらも、自分に何かあったとしても3人が逃げる時間くらいは稼いでみせる。そんな覚悟くらいとっくに出来ていた。