第22章 真実の愛はディアボリック
マレウスの怒りは、再びデュースに向けられた。
たしかに、ローズを呪ったのは彼自身。しかし、デュースが口にした その他の言葉は全て身に覚えがない。
マレウスは、本気でローズを愛しているのだから。
彼女にかけられた呪いが解けるならば、この身を捧げてもいいとさえ思っていたのに。
「人間風情が…!随分と、勝手な事を言ってくれる…!」
「っ、ローズ!下がれ、」
『…………』
マレウスが立つ地面付近から、バラバラと音を立てて石や草が持ち上がる。目には見えない怒りのオーラが、辺りの空気をヒリつかせた。
ローズは、体の全細胞が、逃げろ と叫んでいるのを聞いた。きっと、これが本能という奴なのだろう。まさに、命の危機を感じた。
しかし…彼女は、本能の叫びには従わなかった。
震える手で、シルバーナイフを手にした。
ローズがマレウスに、ナイフを向けたのだ。
しかしそれは、攻撃ではない。至ってシンプルな、防御であった。
背に庇ったデュースは、もうとっくに限界を超えている。一歩も動けそうになかった。この場から一緒に逃げるのは不可能だろう。
そんな、大切な人を守らなければならない。という状況の中、目の前には最強の魔法士が立っていて、こちらに牙をむいている。
咄嗟に武器を手にした彼女を、責められる者はいないだろう。
しかし、マレウスを絶望の淵へ追いやるには、十分過ぎる行動であった。