第21章 育まれる愛とフルムーン
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それからまた、数日の時が流れた。
ここは森の家の前。
眩しいくらいに降り注ぐ太陽の光を、新緑の葉が受けてキラキラと輝いている。
ローズの目前に広がる、立派な木々。色々な種類の動物。名前も知らない花々。そして…
沢山の、大釜。
「大釜ぁ!!」
『今出た大釜で7個目。いつ見ても本当に凄いわよね、デュースの大釜芸』
「失礼な、芸じゃないぞ!これはれっきとした魔法だからな?」
『ごめんごめん、そうだったわよね。つい…』
「でもな…僕は最近、時々 不安になるんだ。
もしかしたら…もしかしたら、これが俺のユニーク魔法なんじゃないかって!」
『ぅ…』
「それが事実だとしたら悲惨だと思わないかっ?思うだろ!?ただ釜を出せるだけなんて…!俺はもっとこう… リドル先輩達のような、個性的な!ユニークな魔法が使いたいんだ!」
『大丈夫っ、大丈夫よデュース!この魔法だって凄く…個性的よ?
それにほら、これだけ釜があったら一生 料理するには困らないし!』
「こんなに釜を必要としてるのは、クレアおばさんくらいのもんだと僕は思う!!」
地面に突っ伏して、目には涙を浮かべるデュースをローズは出来る限り励ましたのだが。彼は思うように元気付けられてくれなかった。
こうしてデュースの魔法の訓練に付き合うのは、特段珍しくない。彼がローズの護衛役を務める時は、ほぼ毎回 家の前で鍛錬に付き合っていた。
リドルは幼い頃に、ユニーク魔法を習得したという。そしてトレイも、既に会得済みだ。
まだこれといったユニーク魔法に出会えていないデュースが焦るのも無理はなかった。