第19章 悔恨と踠きのドラコニア
『胸は痛い?心臓がぎゅってなる?常に一緒に居たいって思う?声とかも、聞くたびに耳が熱くなって…あと、特に意味も無いのに名前を何度も何度も呼びたくなったり、それから、それからっ』
トレイの両腕を掴んで、勢いに任せ言葉を浴びせるローズ。そんな彼女を驚いた様子で見つめるオクタヴィネルの3人。
しかし、詰め寄られている本人は至って冷静だった。
「なんだローズ。全部分かってるんじゃないか。そうだな、きっとそれ全部が…
好きって気持ちだ」
トレイは、困ったように笑って見せた。
『……そ うなのね…。分かった、…ありがとう』
力無く、ふらふらと一番近くにあった椅子に腰掛けるローズ。
「ローズさん?それで、僕との契約婚姻は考えて頂けたんですか?」
椅子に座ったっきり、沈黙を貫く彼女。見兼ねてアズールが発破をかける。
『………』
「僕と縁組みをして、共にディアソムニアを動かす。もはやそれしか、北の深海を救う道は無いんですよ」
アズールは、彼女が首を縦に振るしかないと 理解していた。
事実、そうなる予定であった。
——マレウスさえ、現れていなければ。
『……縁組みをしなくても、その件は…解決出来ると思う』
「「「は?」」」
「ローズ?それは本当なのか?一体どんな方法が」
彼女は、質問には答えず立ち上がる。
『ごめんなさい…。今日はもう、休みます。なんだか…頭が混乱して…。
詳しい話は、必ず 明日…するから』
それだけ言い残すと、ローズは2階にある寝室に上がった。
今、彼女の頭の中全てを マレウスドラコニアが占めていた。
彼女は今日、愛を 知ったのだ。