第19章 悔恨と踠きのドラコニア
「ははっ。そんなの、俺がローズを好きだからに決まってるだろ?」
「!」
「おや…」
「ふーん。なんか〜そんなアッサリ言われちゃうと面白くねんだけど」
トレイの突然の告白に、三者三様の反応を見せる。そんな中、ローズは足早に彼の前へと歩み出た。
今までのぼんやりとした表情から一転、切羽詰まった様子だ。
『トレイ、今…何て言ったの?』
「え…あ、それは…ほら。あれだよ」
さすがのトレイも、まさか満座で2度も告白をする羽目になるとは思っていなかったのだろう。
目の前に立っているローズから目を逸らし、もごもごと口籠る。
『トレイは、私が好きなの?』
不自然な程に、真剣な眼差し。
「………」
人が人ならば、勘違いしてしまいそうなシチュエーションだ。
自分の告白に、ここまでの反応を見せるという事は…まさかローズも自分に気があるのか?まさか両想いなのか?そう思っても不思議ではない。
しかし、トレイは聡い男であった。
彼は、すぐに気付いた。
ローズのこの熱い視線は、自分に向けられているのではない。と。
「……はぁ」
それに気付けたからこそ、冷静になれたのだった。
「あぁ。そうだな。俺はお前が好きだよ。もう何年も前からな」
『じゃあトレイ。私に教えて。
“ 好き ” って、どういう気持ちなのか』