第19章 悔恨と踠きのドラコニア
マレウスは、直向きに考える。
彼女の呪いを解いてやる事が出来ない今、自分にしてやれる事は何か。
それは、何だって良かった。例えば、ローズにとって敵である者を代わりに駆逐してやるでも良いし、人間では知り得ないような知識を授けてやるでも。
とにかく。今目の前に立っている、このか弱き小さな命の為に 何かをしてやりたくて堪らなかった。
「ところで、人の子。お前はたしか、今何か 大きな問題を抱えているのではないか?」
『!そ、そう。どうして分かったの』
「…ふ。僕はディアソムニアいちの魔法士だぞ?そのくらいの情報を得るくらい、造作も無いわ」
ここ最近の、森の家の慌ただしさ。加えてローズの数日間にも及ぶ不在。
ずっと彼女を見守っているマレウスには、異常事態が起こっている事は容易に把握出来た。が、それを打ち明けるのは なんだか恥ずかしいので、彼は適当な言葉を並べてはぐらかした。
『そう…さすがマレウス。凄いのね…。そう。私には今、やらなくちゃいけない事がある』
「話してみろ。
なに、遠慮する事はない」
出来るだけ優しく促すと、ローズは話をし始めた。
オクタヴィネルには、海の中に美しい世界があり。しかしその美しい海が、人間の手によって穢されている事。
苦しんでいる生き物たちがたくさんいる。どうしても彼等を救いたいと思っている事を。