第19章 悔恨と踠きのドラコニア
『マレウス今…、もしかして、私の呪いを解こうとしてくれた?』
なんとなくで 状況を理解したローズが、目をパチクリさせてマレウスに問い掛ける。
「…出来れば解き放ってやりたいと思い 試してみたが。それは叶わなかったらしい。
よほど、強力な呪いだとみえる」
そう。あの時の彼は、それほどに強い怨念の塊であった。今となっては、衝動的に動いてしまった自分を苛む事しかできない。
『いいの。いいのマレウス。私は、貴方のその気持ちが嬉しい。
だから…そんな顔をしないで』
「!」
そんな顔。そう言われる事で、自分が今にでも泣き出してしまいそうな表情だと自覚したマレウスであった。
『それに…、そんな貴方にだから話せる事もある』
ローズは、自分の身における最大の秘密を今 明かそうとしている。
『あのね 実は…ある人のおかげで、呪いの効力が弱まっているの。
だから、来る時が来ても 私は死ぬ事は無い』
彼女は、その人物のおかげで 死を回避出来る事。そしてその為には、心から愛し合える人を見つけなければならない事をマレウスに話して聞かせた。
自分の呪いを解こうとしてくれたマレウスになら、この秘密を打ち明けても問題は無いと判断したのだ。
「……」
彼は鋭い目を大きく見開き、心底驚いている。
マレウスからしてみれば、まさに寝耳に水。まさか自分がかけた呪いを弱めた者がいるななど 思いもしなかったのだ。
ローズはリリアの名を口にはしなかったが、マレウスにはすぐに分かった。
自分の力を捻じ曲げられる者がいるとするならば、それは彼しか思い至らなかったからだ。
マレウスは、瞳を閉じて リリアへと想いを馳せる。
独断で、ローズの命をなんとか繋ぎ止めてくれていたのだ。感謝しても仕切れない思いであった。