第19章 悔恨と踠きのドラコニア
「当然だろ?そんな話を聞いて、俺は何も感じないような人間じゃないからな。何だって協力するさ。
それに。もしリドルがこの場に居れば、俺と同じ事を言ったと思うぞ」
ニヤリとニヒルに口角を上げたアズールは、改めて椅子に深く腰掛けた。
「これはこれは!ハーツラビュルの全面協力とは、ありがたい限りですねえ!」
まるで言質を獲った。とでも言いたげな顔である。
『私も、今すぐにでも何かしたい!
とりあえず考えているのは…
一度、城に戻ろうと思う』
「お、おいおい。それはマズイんじゃないか?ローズは一応、ここに身を隠して暮らしているんだぞ?」最近は色々動いてくれちゃってるが
『危機に瀕している命がいくつもある。私だけ隠れているわけにはいかない!』
彼女は考えを改めなかった。今、自分に出来る事を全力で。それしか頭になかったのだ。
黙って後ろで話を聞いているフロイドとジェイドは、ローズがこう言い出すであろうと予想していたようで。何ら驚きはしない。
カツン、と。木と木をぶつけたような音が、部屋に静寂を運んで来た。
それはアズールが、携えた杖を使って床を叩いた音だった。
「少し落ち着いて下さい。
貴女は、城へ戻り何をするおつもりですか?」
『私が直々に、環境大臣に話をつけるわ』
アズールは、ローズの言葉に大げさな溜息を返した。
「16歳になる前の貴女が城へ出戻れば、それだけで国中がパニックですよ。
さらにそのパニックの中、突然 国政に口を出してごらんなさい。気が触れたのかと、本気で心配されますよ。
そんな状況で、一体 誰が貴女に耳を貸しますかねぇ」
アズールの正論すぎる正論に、誰一人として言葉を返せなかった。