第19章 悔恨と踠きのドラコニア
『た、ただいまぁ…』
森の家を出立してから、約2日ほどが経過しようとしていた。
彼女は恐る恐る玄関扉を開く。なぜこのように身構えているかというと、もちろんリドルがカンカンに怒っているだろうと予想しての事だ。
彼らは、リドルを気絶させるような真似をして海へと赴いたからであった。
しかし
「お、おかえり。無事で何よりだ」
出迎えたのは、リドルではなかった。
「あれぇ〜。ワカメちゃんじゃん。金魚ちゃんは〜?」
そこにいたのは、激怒したリドルではなく、トレイ クローバーだった。
「フロイド久しぶりだな。それより、ワカメはやめてくれないか?
どうだ?俺 考案の、“ ウミガメ ” にアダ名を変えてみるのは」
「トレイさん。ご無沙汰しております。そんな事より、どうして貴方がここに…」
ジェイドは、リドルの叱咤を覚悟していたのだが。代わりにいたトレイを見て 内心はほっとして彼に問い掛けた。
「おいおい、他人事だと思って そんな事よりって…。まぁいいか。たしかに今は、アダ名なんて些細な事だよな。悪い。
リドルなら、俺と交代で一度国に帰ったよ。本来なら、もうとっくに交代の時間は過ぎていたんだが、無視してここに留まり続けていたからな。
国からの遣いに、強引に連れて行かれた」
困ったように笑い、トレイは丁寧にその場にいる者に説明をしてやる。
『そうよね…。私の為に、国の政を疎かにさせてしまっては申し訳ないし、今度また謝らなくちゃ』
「なーんだぁ。せっかく真っ赤になって怒る金魚ちゃんが見られると思ったのに」つまんね
「まぁ本来、一国の王子が長らく国を空け こんな場所にいる事の方が突飛ですからね」
「ふふ、僕達にとっては 好都合でしたね。怒られる心づもりが、無駄にはなってしまいましたが」
それぞれの反応を見せる4人に、トレイは笑って言う。
「そんな安心しきってるお前達に、リドルから伝言だ。
“ 次に会った時は…。分かっているね?全員 覚悟しておくように ”
だ、そうだ」はは
トレイの楽しそうな笑顔が、4人を凍り付かせるのだった。