第18章 穢れた海とマーメイド
アズールは、ローズの感情を読み取ろうと努めた。
自分の国が、海を汚し。今 目の前にいる人魚達を苦しめている。その事実に、彼女がどのような行動を取るのかも興味があった。
都合の良い言い訳を並べ立てるのか。それとも泣き喚く?無意味な謝罪の弁を口にするのか。はたまた、この現実から目を背けるだろうか。
彼はただ静かに、ローズの行く末を見極める。
『………』
彼女は、アズール達には何も言葉を発さないまま、一人の人魚の元へと移動する。
「ちょっとお姫様さぁ、なんとか言ったらど」
「フロイド。待って下さい」
無言のローズをフロイドがせっつこうとするが、アズールがそれを片手で制した。
彼女が向き合うのは、鱗が剥がれてしまった人魚。
剥がれた箇所からは、痛々しく、赤みのある皮膚が覗いていた。
「おやおや…綺麗な人魚さん。どうもはじめまして」
初対面であるローズに、その初老の女性は優しく微笑んだ。
『はじめして。私は、ローズと申します。少しお話をさせてもらっても良いですか?』
「もちろんだよ。ふふ、嬉しいわねぇ。どうぞ座って下さいな」
そう言って、その患者はローズに石で出来た椅子を勧めてくれる。
ありがたく、それにちょこんと腰をかける。
『…お怪我は、痛むんですか?』
「痛みは…無いんだけどね。でもほら、やっぱりこんな見た目になっちゃったから。
気持ち、悪いでしょう」
笑ってはいたが、その笑顔はとても痛々しくて。見ている方が心臓をギュッと掴まれたような心地にさせられる。
しかし、ローズは目を逸らさない。