第18章 穢れた海とマーメイド
最後に、アズールがローズの前に立ち語る。
「海を汚された人魚達は、陸に上がるべく研究に研究を重ねました。勿論 人間にこの愚行をやめるよう伝える為に、です。
やがて苦労の末、人魚達は足を手に入れました。
そして、人間達に言いました。これ以上、自分達の住む海を汚さないで欲しいと。
しかし、愚かな人間達から返って来た言葉は、人魚達の想像を絶するものでした。
“ 武器の生産ラインを止める事は出来ない。そんな事をすれば、他の諸外国に遅れをとる結果になってしまう。
また、汚れを陸地に置いておく事も出来ない。人間の体に悪影響を及ぼしてしまう可能性があるから ”
それが、人間から返って来た答えでした。はい、めでたしめでたし」
ローズは、目の前が真っ暗になるのを感じた。もはや立っているのがやっと。という状態だ。足は微かに震えていた。
そんな彼女に、ジェイドが更に追い討ちをかける。
「ちなみにこの言葉を下さったのは、他でもない貴女の国の 環境大臣ですよ。どう思います?ローズさん」
どう思う?も、何もあったものではない。
腹立たしい、と思う事すらおこがましいと感じた。腹を立てる権利すら自分にはないと思った。
海を汚しているのは、他でもない人間。自分達に他ならないのだから。
『…じゃあ、アズール 貴方達が 各国の領土を手に入れようとしていたのは…この海を、守る為?』
「ええ。もし海が、元の美しい姿に戻り。人間達が金輪際 このような愚行を繰り返さないと言うのなら、僕に他国を侵略する目的は無くなりますからね」