第18章 穢れた海とマーメイド
3人と共にやって来たのは、この病院でも1番大きな病室だった。
病院なのだから、病人がいるのは当たり前だ。しかし、海の病気に詳しくないローズでも分かるくらい、ここにいる患者達は異様だった。
尾びれの鱗の大部分が剥がれ落ちてしまっている者。目に包帯を巻いて、完全に視界を奪われている者。声が出せないのであろうか?見舞客と筆談で会話する者。
ここにいる全ての患者が、そんな様子だ。患っている病が、決して軽い物ではない事が見てとれる。
『…教えて、ここにいる人魚達は…どうしてこうなってしまったの』
ローズは部屋の中央に立ち竦み、後ろにいる3人に背中で問うのだった。
「——昔々、それは綺麗な海がありました」
まるで子供に御伽噺を聞かせるかのように語り始めたのは、ジェイド。
「水は澄んで濁りなく、珊瑚が群生し 世界の宝とも言えるその海は。まさに人魚達にとっての楽園でした。
しかしある時を境に “ 廃油 ” や “ 汚染物質 ” が流れてくるようになったのです」
ジェイドの次は、フロイドが口を開いた。
「一体どこからその汚れが来てんの?と思った人魚達はぁ、一体誰が、どんな理由があって海を汚すのか 調べました〜。
それはすぐに分かった。犯人は人間達なのでした。
武器の製造や建築によって出る汚れ。自分達の生活を豊かにする為だけに、人間は汚染物質を海に垂れ流してたんだってさぁ。
…ほんと、馬鹿過ぎて笑えねぇ」