第17章 迫り来るオクトパス
フロイドは叫ぶと、凄いスピードでローズに駆け寄り、そのまま彼女の手を引いていく。
そして、なんとザブザブと海の中に入っていくではないか。
『えぇ!?ちょ、フロイド!』
彼に引き摺られるように、初めての海に入水。さすがに驚いて声を上げた。
しかし、フロイドは意に介さない様子でどんどん深い方へ歩みを進める。
「早く早く〜」
いよいよ足が地面から離れてしまう水深まで来た。不安なローズとは対照的に、フロイドの声はどんどん楽しげに弾んで行く。
『やっ、待っ 私泳げな』
「フロイド。いけませんよ」
まさに溺れる一歩手前だった体を、ジェイドが横抱きにして助けた。体を持ち上げて貰った事で、彼女は再び呼吸が出来る。
「ローズさんが怖がっているではありませんか」
「溺れたらオレが助けてやるって」
いつまで経っても自分を追い掛けて来ない3人に、アズールは痺れを切らす。
「貴方達には付き合ってられませんね。僕は一足先に行っています。待ってますよ。
あの場所で」
そう告げると、1人どんどん海の中へと姿を消していく。そしてなんと、ついには頭の先までが海の中へと沈んでしまったのだった。
『ちょ!ジェイド!アズールが溺れて』
「あっはは!お姫様何言ってんの〜?アズールが海で溺れるわけねぇじゃん」
楽しそうに笑いながら、フロイドはぐちゃぐちゃに濡れた服を脱ぎ始める。
『!?』
突然の奇行に、ローズは思わず手で両目を覆う。
「では、僕達もそろそろ行きましょうか。でないとアズールに怒られてしまう」
そう言うとジェイドも、フロイドと同様に脱衣し始める。
器用にもローズを片手で抱き、残った片手で服を脱いでいるのだ。
『な、なん、なんで脱ぐの!?』
「すぐに分かりますよ」
自信満々で言ってのけるジェイドを、ローズは見上げる。
陽の光が逆光になっている為見えずらかったが。彼の濡れた髪や顔はキラキラ光っているかと思えるほど綺麗だった。
「何も怖くないですから、しっかりと僕に掴まっていて下さい」
にこり笑って、ジェイドはローズを抱えたまま海に沈んだ。