第17章 迫り来るオクトパス
アズールは、やっと腑に落ちた。
何故 彼女が護衛であるリドルを置いて自分達に着いてきたのか。
「…ただの馬鹿ではない。という事ですか」
考えを改める。ローズがただの物を考えないお人好しではなく、意外にも抜け目がない部分も持ち合わせているのだ と。
しかし…
また次のローズの言葉で、またアズールは彼女という存在に悩まされる事になる。
『まぁ、契約書にそう書かれていたから。っていうのも勿論、着いてきた理由だけど…
別に書かれてなくても、私はここにいたと思う』
「…へぇ、そうですか。理由を教えて頂けますか?」
『私は知ってるから。本当は、アズールは優しいって事』
これには、アズールだけでなく。隣で眠そうにしていたフロイドも食いつく。
「…なんでそう思うわけ?アズールやオレは、アンタの命すら狙ってんだよ?」
『理由は、まず…
貴方達がディアソムニア城を襲った時、誰も死ななかったという事実。兵士も、世話人も、王族だって1人も死んでない。
あと襲撃は、貴方の指揮だったんでしょう。アズール』
彼は答えずに、ただ真っ直ぐにローズを見た。
『あともう一つの根拠は…私、自身。
私がまだ生きて、ここにいるという事。もしアズールが本気になったら、きっと私なんかとっくに死んでる。
でも貴方は、私を殺さずに夢の国に閉じ込めようとしてみたり、フロイドを泳がせてみたり…。回りくどい事ばかりでしょ?
だから私気付いたの!
アズール。本当の貴方は、心根のとても優しい人』
「………」
アズールは、閉口した。
そして、再度 考えを改める。
「〜〜っっ、や、やはり、貴女は、ただの馬鹿だっ!」
手袋をはめた両手で、熱い顔を覆って隠した。
そんな彼を、フロイドが興味津々で覗き込む。
「あっはははっ、アズール顔真っ赤じゃん!ジェイドー!アズールが茹でタコみてぇになってておもしれー!」
そして、大声で御者を務めているジェイドに報告した。
「楽しそうですねぇ、僕もぜひ拝見したいので フロイドここ代わってくれません?」
前方から返ってくる声に、フロイドはこう答える。
「ん〜?ぜってぇ嫌」