第17章 迫り来るオクトパス
オクタヴィネルの3人が、そんな会話をしているすぐ隣では。リドルのお説教が始まっていた。
「まったく…。いいかい、よくお聞き。あんなに簡単に契約を結ぶなんてローズは警戒心というものが欠如している」
『ごめんなさい』
「大体、きちんと約款には全て目を通したのかい?勿論きちんと読み込んでからサインしたのだろうね」
『ごめんなさい』
ローズは、自分がいかに彼に心配と迷惑をかけているか一応は自覚していた。なので素直に謝罪の言葉を口にする。
「…お姫様かわいそ。めっちゃ怒られてっけど」
「これも全てアズールのせいでは?」
「……仕方がありませんね。せめてもの償いとして、話が終わるまでは待っていて差し上げましょう」
意外にも優しかったオクタヴィネル一行は、言葉通り2人の会話が落ち着くまで側で待つ事にしたのだった。
数十分後。
言いたい事を全て伝え終えたリドルは、最後にこう告げた。
「まぁ、あんな紙切れ一枚で契約なんて…。口約束と何も変わりは無いけどね」
その挑発的な物言いに、堪らずアズールは立ち上がる。
「おや、それはどういう意味でしょうか。僕との契約が口約束?聞き捨てなりませんね」
リドルも一歩、アズールの方へと歩み寄る。
「その契約書さえ、どうにかしてしまえば…契約は無効だと言っている」
言いながら、一度は胸元にしまった契約書を取り出す。そしてそれをリドルに見せ付けるように広げた。
「面白い。試してみますか?」
『ちょ、待っ』
ローズが口を挟む隙もないほどのスピードで、リドルはマジカルペンを契約書に向けて突き出した。
筒状の炎が勢い良く、アズールの手の中にある契約書に向かって行く!