第3章 暗躍する確固たる悪意
アズールの謀略が、現在進行形で進んでいる事など知る由もないオーロラは。
そろそろ地下室を後にしようと、外廊下に続く扉に手をかけた。
しかし、彼女がノブを引くよりも前に。
向こうの方から扉が押されたのである。
『!!』
「あー、お姫様こんな所にいたんだねぇ。やっと見つけた」
どうして、フロイドがここにいるのだろうか。
オーロラは驚きのあまり、少しだけ後ろに飛んだ。
「あはははっ、なにそれその反応〜。超おもしろ。
でもそんなふうに逃げられるとー…、捕まえたくなっちゃうよね?」
ふざけたように言いながら、フロイドは後ろ手で扉をパタンと閉めた。
また彼は、私をからかって自分の好奇心を満たすつもりなのだろうか。
そんなふうに考えると、やはり面白くない。オーロラはフロイドを睨み上げた。
「…いいねぇ、やっぱ可愛い。
優しくして ギューってしてあげるから、こっちへおいでよ」
1歩。また1歩と。フロイドは確実に彼女との距離を詰めていく。
オーロラは彼が歩みを進める度に、自分は後ずさる。
しかし、背中に冷たくて硬い物が当たる。いつの間にかガーゴイルがすぐに後ろにあった。
彼女は自分が追い詰められている事に気が付いた。
『……フロイド、どいて』
「ん〜…どうしよっかなぁ?」
口では迷うそぶりをみせたくせに、フロイドはオーロラの顔の隣に両手を突いた。
また至近距離で、彼と顔を付き合わせる事になるとは。と。
彼女はまるで他人事のように考えていた。
「ふふっ、もうすぐだねぇ。
もうすぐ、お姫様の泣いちゃう顔見れるんだって思ったら…
あがるー」
『だから、前も言ったけれど。
私は貴方の前では泣かないって決めてるの』
「…強情なお姫様だねぇ」
フロイドは、長い舌を出した。
そして、その舌でオーロラの耳横の頬を舐め上げた。
『っ!?』
生まれて初めて、他人の舌が自分の肌を這う
そのざらりとした感触に、肌が泡立った。