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眠り姫の物語【ツイステ】

第3章 暗躍する確固たる悪意




オーロラが10歳になるまで、残すところあと2ヶ月となった頃。

城内は、彼女の生誕10歳を祝う式典の準備で大忙しだった。


誰よりも美しく、すくすくと元気に育つ彼女の成長を

王族は勿論、国民や諸外国の人達も大いに喜んだ。

きっと2ヶ月後のパーティも、煌びやかで盛大なものになるだろう。


しかし…肝心の主役の胸中には、もやがかかったままだった。

常にアズール達と共にいるフィリップの身も案じていたし、自分の国の行く末も勿論気掛かり。

それを誰にも相談出来ず、自分の中に留めておかなければいけなかった。

しかし今の自分には、何も成し得る力が無い。それがまたもどかしかった。


『…私にも…貴方みたいに、大きな爪や牙があったなら…

もし何か起こってしまっても、この国を守る為に戦えたのにね』

オーロラは1人、まるで友達にでも話しかけるように

地下室のガーゴイルに語りかけた。



彼女が地下室で過ごしている間、時を同じくして

国王に謁見する、男の姿があった。

「おお、そなたが噂に名高いアズール・アーシェングロットか。

着々とオクタヴィネルの領地を広げているらしいな。

ヒューバート王が、鼻息を荒くして貴殿の自慢話をしてくるのだ」

初めて拝む事の出来た、隣国の敏腕大臣の顔に

国王は興奮気味に言った。

隣にジェイドを控えさせたアズールが、国王に向かって深々と頭を下げて。
綺麗に指を揃えた片手を、胸の上に置いた。

「偉大なるディアソムニア国王陛下に、そこまで仰って頂けるとは。

光栄の極みでございます。

今や貴国ディアソムニアと、我がオクタヴィネルは同盟を結んだ家族も同然です。

オクタヴィネルに身を置く私ですが、どうぞご自分の手足と思ってお使い下さいませ。

ステファン王様…」

「心強い言葉、痛み入る。

我が国が困窮した際には、遠慮なく助成を乞うとしよう。

今後とも、よろしく頼む」

アズールは再び頭を下げて、込み上げる笑みを必死で殺していた。

今は笑ってはいけない。

この流れで国王に、撒いておかなければいけない “種” が彼にはあった。

アズールはなんとか苦痛に歪む表情を作ってから、顔を上げた。

「……ところで国王陛下…

これは私が独自のルートで仕入れた情報なのですが…」
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