第17章 迫り来るオクトパス
「……なんだって?」
あまりにも拍子抜けしてしまう、アズールの物言いに。リドルは思わず魔力を散らしてしまいそうになる。
「僕はこの場に、話し合いに来たのですよ」
相変わらず飄々と言ってのけるアズール。リドルは頭に血がのぼるのを感じた。
「今さら…、話し合いだって!?そんなふざけた言い分、彼女が許しても このボクは許さな」
「はいはーい金魚ちゃんは静かにしてようね?」
なんとフロイドが、リドルの背後に回り彼を拘束してしまう。いつの間にかそれにジェイドも協力して、2人がかりで体を押さえつける。
「なっ、キミ達は…一体何がしたいんだ!!」
「何がしたい…ですか。そうですねぇ、あえて明確にするならば…
“ 楽しみたい ” ですかね」
リドルは、少しでもこの兄弟に気を許した事を後悔した。しかし、いくら悔やんでももう遅い。
必死で手足をばたつかせてみても、大きく体格の違う2人に押さえ込まれては 成す術がなかった。
『いいわ。話し合いなら、私もずっと望んでいた事。
そこにかけなさいアズール。2人で納得のいくまで話をしましょう』
「………」
アズールは この時初めてローズを、対個人として認識した。顔姿を見て 声を聞いて。1人の人間として認識したのである。
今までは、自分の計画の為に動いてくれる駒くらいにしか思っていなかったのだ。
改めて、感じる。
自分が今まで命を狙っていたのが、一国の姫である事。
いま目の前に座っている彼女は、紛う事なき王族。
ローズが放つオーラと、堂々とした佇まいが 嫌という程伝わってくる。
アズールは、そんな彼女を見下ろして。より気を引き締めるのだった。