第17章 迫り来るオクトパス
「ちぇ〜。なんだ アズール気付いてたんだぁ。つまんねぇの」
「僕達の浅い腹など、全てお見通しというわけですか。さすがです」
「当たり前でしょう。もう何年 貴方たち兄弟と付き合っていると思ってるんですか。
何か企んでいた事くらいは、見通せて当然です」
この会話を聞く限りでは、フロイドとジェイドが裏切ったわけではないと。ローズとリドルは判断する。
「…ふ、驚いたね。まさかボクのユニーク魔法までご存知のとはね。しかもきっちりと対策を練られていたとはね。恐れ入ったよ」
内心の焦りを気取られないように、あくまで冷静な顔を繕って言葉を紡ぐ。
「素晴らしい貴国の代表である王子様 直々にお褒め頂けるとは。光栄の極みですね。
ただ…ハーツラビュルの中には…少々お喋りな傭兵さんもいらっしゃるようで?」
「何の事を言っているんだい?」
リドルにはアズールの嫌味が通じていないようだが、ローズは瞬時に 1人の男の顔が浮かんだ。
それは、以前ハーツラビュル内で出会ったエース・トラッポラだ。
やはり彼は、フロイドが言った通りアズールと通じ合っていたのだろう。おそらくはリドルのユニーク魔法の情報を流したのも、彼だ。
「べつに、そんな事はどうでも良い。
キミがいくらボクのユニーク魔法に対策を講じていたとしても、ボクが魔法を封じられたわけじゃない。
覚悟おし、アズール・アーシェングロット。
ローズを傷付けた事を、心の底から後悔させてやるからね」
言葉の通りリドルは、渾身の魔法力を その体内で練り上げていく。
その圧は、その場にいた全員が身震いしてしまうほどだった。
「待って下さい。そのような物騒な話は、やめて頂けませんか」
どの口が言うのかアズールは、心底迷惑そうな顔をリドルに向けるのだった。