第17章 迫り来るオクトパス
『………』
コツリ。
硬い音が板の間に当たる音がして、ローズは顔を上げた。
そこには、3人の男が立っていた。
真ん中を陣取る彼が、シックな杖を地に突き立てて口を開く。
「オーロラ姫。あ、失礼…今は、ローズ様…と名を改められたそうですね。どうもご無沙汰をしております」
『…ご無沙汰を?ふふ、貴方と私は初対面のはずだわ。それとも…私達、以前にどこかで会ったのかしら?
アズール・アーシェングロット』
アズールとローズは、互いに決して本心を悟られないように。出来る限り感情を殺して 初めての挨拶を終わらせる。
ピンと背筋を伸ばしたアズールの両隣には、嘲笑的な顔で立つリーチ兄弟の姿があった。
「おや、突然の来訪にも関わらず 貴女は全く驚かないのですね。まるで僕が来る事を知っていたみたいだ」
『………』
まさに腹の探り合いが目的の、不毛な会話。
そんな対話はもう結構とばかりに、ローズは部屋の隅の暗がりに視線をやる。
すると、すぐさまリドルがアズールの背後に立ち魔法を放つ。
「オフ・ウィズ・ユアヘッド」
「!!なっ」
アズールは驚き、リドルの方へ振り向いた。しかしもうその首輪はガッチリと彼を捉えていた。
この魔法 “ オフ・ウィズ・ユアヘッド ” は リドルが使える独自のものだ。彼が魔法で出現させたこの首輪を装着させられた対象は、一切の魔法の使用を禁じられる。
…はずだったのだが。
「…なんて、驚いたふりをしてみましたが。どうでしたか?僕の演技力は」
本当に驚かされたのは、ローズとリドルの方だった。
アズールは、そのハートをモチーフにした重々しい首輪をいとも簡単に外して見せたのだ。