第17章 迫り来るオクトパス
「ジェイドさぁ」
2人は、オクタヴィネルへの帰路を急いでいた。
ジェイドは馬に乗り、フロイドはその隣を自らの足で駆けている。
「馬なんかに乗るより、自分の足で走った方が早くね?」
「僕は貴方みたいな体力オバケでは無いのです」
「オバケ」ひっで
フロイドは、森を自らの足で駆けるのが好きだった。時には枝を利用して木に上がってみたり。大石の上から飛び降りてみたり。
まるで遊ぶようにしながら、高速で移動するのが楽しくてたまらなかったのだ。
今も、馬に乗って移動しているジェイドの隣で 楽しみながら全身を使って走っている。
「ジェイドさぁ」
「まだ何か?」
「お姫様の事、気に入っちゃった?」
突然の片割れの質問に、少しだけ目を大きくした。驚きはしたものの、嘘をつく理由などは特に無かったので素直に答える。
「そうですね。面白…、いえ、楽しい方です」
「ジェイドもそう思った?あっは、いいよねぇ〜見てるだけで退屈しねぇの」
ニコニコとご満悦なフロイドを馬上から見下ろして、ジェイドは同意する。
「えぇ。それに、面白い物の考え方をしている。僕では考えつきもしないような答えを弾き出したりするんです。本当に、飽きない人ですよね」
先程の、ローズの言葉をジェイドは思い出していた。
“ どんな理由があって…あの人達を貶めたのか。
どんな理由でも…絶対に許さない。マレウス達を、利用した事 ”
彼女が城を襲われて、怒りの感情が生まれるのは理解出来る。しかし、その理由がジェイドの理解の範疇を越えていた。
「どうして、他人の為に あそこまで怒る事が出来るのでしょうね」
ローズは、最後まで口にしなかった。
私が呪われてしまったのは、貴方達のせいだ!という類の言葉は。
「普通さぁ、他人傷付けられるよりも、自分に何かされた方がムカつくじゃん。
でもお姫様はいつでも、自分の事は後回しにすんだよねぇ。変なの」
「…そういう、変なところ…が面白いんですけどね」
帰国しながらの2人の会話は、まだまだ続く。