第17章 迫り来るオクトパス
「説明する気は無いようだ。それなら、これからボクに何をされても、文句は無いね」
オクタヴィネルの彼等が、マレウス達に扮して城を襲ったりしなければ、きっとローズは呪いをその身に受ける事も無かっただろう。
それだけで、リドルが2人を攻撃する理由には十分過ぎる。
腹の中から湧き上がる怒りを、相手にぶつけようとした
まさにその時。
ずっと静観し、思慮を巡らせていたローズが口を開いた。
『…アズール』
突然 自分達の主導者の名を耳にした2人は、ピクリと体を反応させる。
『首謀者は、彼なんでしょう。
フィリップから、ずっと前に聞いた事があるの。
フロイド、ジェイド。貴方達は、どうしてあんな事をしたのか 何も話さなくて良い。
その代わり…
アズールをここへ連れて来て。話は全部、直接彼に聞かせてもらう』
凛とした声が、狭いこの部屋を満たした。
「…あのさぁ。もう分かってると思うけど、アズールはお姫様の命狙ってんだよ?そんな男に会うの…怖くねぇの?」
フロイドはリドルを押し退け。上背のある腰を折って、ローズの顔を至近距離で見つめて言う。
『怖くない。私、怒ってるから』
予想のしていなかった回答に、きょとんとする2人。
『絶対に聞かせてもらう。一体、どんな理由があって…あの人達を貶めたのか。
どんな理由でも…絶対に許さない。マレウス達を、利用した事』
可憐なローズの瞳が、確かにギラリと怒りで光った。
「あ…は、あはっ!お姫様、やっぱおもしれっ!理由聞きたいって言っといて、聞く前から許さないって言っちゃってんじゃん!
あはは!それって聞く意味なくない?!」
腹を抱えて笑うフロイドの横で、ジェイドも遠慮する事なく笑いを溢す。
「ふふふ、いいでしょう。たとえ貴女とアズールが直接話しをしても、何も解決するとは思えませんが…
僕達で、場を設ける努力をしてみましょうか」
そしてしばらくして、ジェイドとフロイドの2人は森の家から立ち去る。
その際に、ジェイドが残していった意味深な言葉の意味を、ローズはしばらく考えていた。
「ローズさん。貴女はアズールの事を決して許さないと仰いましたが…
でもそれは、アズールもきっと同じですよ。それに…僕達も。
決して、愚かな人間達を許さない」