第17章 迫り来るオクトパス
「それは…本当なのかい」
明らかに警戒色を強め、リドルはローズを背に庇うように 二人の前にゆっくりと移動する。
その言葉には何も答えず、怪しげに口元に笑みを貼り付ける双子。その態度こそ、彼女の言葉が事実である事を物語っていた。
これから自分がどう動くべきなのか、思考を働かせるリドル。その為に、得た情報を懸命に整理する。
マレウスが、どうして突然 ディアソムニア王家に牙を剥いたのか リドルはようやく理解した。
マレウスは怒って当然だ。自分達は何もしていないのに、突然 理不尽に仲間を傷付けられたのだから。
仮にリドルが彼と同じ立場なら、同じく報復を考えただろう。
その報復こそが、ディアソムニア王家の宝であるローズに呪いをかける事だった。
なんという悲しい因果であろう。マレウスは…ただ、はめられたに過ぎない。
そして…その全ての元凶となった存在が、今 彼の目の前に立っている。
マレウスとリドルは特に旧知の仲という訳ではないが、それでも ふつふつと腹の底から沸き立つ怒り。
しかし、そのやり切れない怒りをなんとか抑えつけながら、低い声でリドルは言葉を続ける。
「一応…理由を、聞いておこうじゃないか」
「あーぁ、どうするジェイド〜?金魚ちゃん、真っ赤になって怒っちゃってるよ」
大抵の人間ならば、震えが来るであろうリドルの怒気を前にしても。フロイドは相変わらず飄々としていた。
手を頭の後ろで組み、この場をジェイドに丸投げしようとしている。
「まったく、フロイドには困ったものですね。あんなにも見え透いた言葉の誘導に乗ってしまうなんて」
「あれ?ジェイド実は結構怒ってる?ねぇ怒ってんの?」