第17章 迫り来るオクトパス
「あ、ヤベ」
小さく呟いたフロイドを、ローズはゆっくりと自分の体から引き離した。
『…やっぱり、あの時 城を襲って来たのは…貴方達だったのね』
そう。彼女は、カマをかけたのだった。そしてそれに、見事にフロイドは引っかかった。
ガーゴイルを壊したと認めてしまったフロイドは、もう言い逃れをする事が出来ない。
「……はぁ」
「アッハ!バレちゃった」
全く気にしていないフロイド。額に手を当て、溜息をつくジェイド。
そしてリドルだけが、この状況についていけないでいた。
「一体どういう事なのか、ボクにも分かるように説明してくれないかい?」
置いてけぼりにされているようで、リドルは少しだけ腹立たしかった。そんな彼に、ローズはすぐに情報を整理して伝える。
『つまりね…約6年前のあの日、ディアソムニア城を襲ったのは…マレウス達じゃなくて
オクタヴィネルの、彼等だったって事』
フロイドは立ち上がって、ジェイドの隣に並ぶ。そんな2人の姿を見上げて、彼女はゆっくりと息を吐く。
今まで、見て見ぬ振りを続けて来たローズだったが。ついにその事実と向かい合う瞬間がやって来たのだった。
気の合う友人となったフロイド。やっと少し距離の縮まったばかりのジェイド。そんな彼等と敵対するのは、言うまでもなく辛い。
しかし。逃げる事は、今までもう随分とやってきた。彼女は、16歳を迎えるまでに 出来る事は全力でやっておきたいと考えていた。後悔の、無いように。真実をこの目でしっかりと見極めたい。
それは、いつの日かで良い。なんて悠長な考えはローズは持ち合わせていない。何故なら、彼女はもしかすると 16歳でその生涯を終えてしまう可能性がある身の上なのだから。