第16章 運命とガラスの靴
それは、まるでスローモーションのように ジェイドの瞳に焼き付いた。
そして今は、互いの姿に釘付けになったかのように 固まっているシンデレラと王子。
ジェイドは、これに近い光景に覚えがあった。
そう。あれは…6年前の、ディアソムニア城。
ローズとマレウスが出会った瞬間に、ジェイドは立ち会っていたのだった。今のこの光景は、その2人の出会いにそっくりだった。
互いが互いを、瞳に写す事だけしか考えられず。まるで2人の周りだけ 時が止まってしまったよう。
はたから見ていても瞬時に悟ってしまう。
あぁ。この2人は、出会うべき2人だったのだ、と。
(…くだらない。まさか、これが…運命?出会うべくして出会った2人だとでも?)
ジェイドが、自ら一番嫌いな言葉を思い浮かべてしまった事に嫌悪したその時。
シンデレラと王子の時が動き出した。
「あ…貴女は」
「私は、…シンデレラと申します」
ゆっくりと地面に降ろされたシンデレラは、自然にガラスの靴に視線を落とす。
そして、王子が自ら身を屈め 彼女にそれを履かせる。するとどうだろう。ぴったりと、まるであつらえたかのように靴はシンデレラの足を選んだ。
「…この靴は、貴女の…靴なのですか」
王子の質問に、シンデレラは首を振る。
「偶然にも私の足にしっくりときましたが…私は、この靴の持ち主でもありません…。それに、王子様がお探しの女性も、知りません」
「……そう、ですか」
再び王子は落胆し、肩を落とす。
そんな王子を、シンデレラは悲痛な面持ちで見つめていた。