第16章 運命とガラスの靴
「…これはもしや…。貴女がいらぬ邪魔をしていなければ、ハッピーエンドだったのでは?」
『うーん。それに関しては返す言葉も無いわね』
シンデレラと王子は無事に出会えたものの、既に王子の心の中にはローズがいる…。
『でも…。…うん、きっと大丈夫!大丈夫…。彼女なら!』
ローズには、2人が上手くいく予感があった。さらにその予感は、シンデレラの瞳を見て 確信へと変わった。
「…貴女も、あの方の事をご存じないのですね…とても残念です。…どうもご協力ありがとうございました。
それでは、私はこれで…」
落胆し、ひらりと身を翻す王子。しかし、その はためいたマントをシンデレラは捕まえる。
思わず振り向いた王子とシンデレラは、再び向かい合う。
「??…どうか、されましたか?」
優しい王子は、シンデレラの言葉をじっと待っている。
やがて彼女は意を決して口を開く。
「わ、私の名前はっ、シンデレラです!」
「え、えぇ。それはさきほど教えて頂きま」
「特技は、お料理とお裁縫で!好きな色は淡いブルーで、後はえっと…、好きな事は、動物達と触れ合う事です!!」
「…………」
王子や従者達だけでなく、継母やその娘達も、突如始まったシンデレラのマシンガントークにポカンと口を開けている。その場にいる誰もが沈黙してしまっていた。
顔を真っ赤にしているシンデレラを他所に、王子がついにその沈黙を破った。
「…っふふ、なるほど。あはは、貴女という方の人となりが、少し分かりましたよ。
とてもユニークな女性だ。素敵だと思いますよ」
王子の爽やかな笑い声が、静まり返っていた空間に花を咲かせたのだった。