第16章 運命とガラスの靴
ジェイドが自分の心と向き合っている最中も、目の前で話は進んでいく。
「もうこの家に、若い女性はおりませんかな?」
大臣らしき男が、継母に問い尋ねる。
継母、一瞬チラリと二階の窓を見たのだが…すぐに視線を戻してキッパリと答える。
「はい。ここには、私達の3人暮らしですから」
『……』
「やはり、僕の言った通りだったでしょう?
あの方は…性根の腐った嘘付きだ」
自分の娘が王子のお眼鏡に叶わなかった。シンデレラには、その僅かなチャンスを与えてやる事もしない。
たしかにあの継母は、ジェイドが言う通りの人間性なのかもしれない。
「…仕方ありませんね。少し、動きましょうか。せめて、シンデレラさんと王子様を引き合わせるくらいは」
『待ってジェイド。
もう少しだけ、様子が見たい』
立ち上がろうとするジェイドの、腕を掴み 強引に下に引いて 再度座らせる。
「王子…さぁ、次の家に行きましょう。この家には、ガラスの靴の手掛かりはありませんぞ」
「…あぁ。分かった」
王子と従者が、この場を去ろうとした…
その時だった。
「まっ…待ってぇー!!」
バーーン!!
と、派手な音を立てて なんと二階の窓から人が飛び出して来たではないか。
これには下にいる従者達も大慌て。ワタワタと情け無く狼狽えている。
しかし、王子だけはしっかりと上空の彼女を見据えていた。しっかり落下地点を見定め、素早くその地点に移動して 大きく両手を広げる。
そして見事に…その胸の中へ、シンデレラは飛び込んだ。