第16章 運命とガラスの靴
しかしジェイドは、断言する。
「あそこにいるお2人は、シンデレラさんではありませんね」
『どうしてジェイドにそれが分かるの』
彼は自信を持って解説を始める。
「あの継母の目…。あれは嘘を付いている目ですから。よく見なくても分かるでしょう。性根の腐った目をしている…」ふふ
『腐っ…』
なんとも楽しそうに説明をするジェイド。楽しみ過ぎて素が出てしまっていた。その証拠に、些か口が悪くなっていた。
「シンデレラを良く思っていない継母が、自ら彼女を王子に引き合わせるとは思いません」
従って、あの2人はシンデレラではない。ジェイドはそう言いたいらしかった。
『…ふぅん。さすが、嘘付きには嘘付きが見抜けるのね』
「失礼ですね。僕はこれまで嘘を付いた事などただの一度もありませんよ?」
『ははーん。よく言う』
2人が草陰で話している間に、ついに娘2人が ガラスの靴に足を入れようとしていた。
しかし…。
「痛たたたっっ!」
どう見ても、サイズが合っていない。しかし継母は、娘の足を小さなガラスの靴に押し込めようと強引に力を入れる。
「も、もう結構です!」
靴が粉々になるシーンでも想像したのか、従者は慌ててガラスの靴を継母の手から取り上げた。
そして、引き続き2人目の娘も同じように足を持ち上げる。今度は継母に代わり従者が、女性の足にガラスの靴を履かせる。
固唾を呑む周りの人間の緊張感が、こちらにまで伝わってくるようだった。
やがて…
「まぁ!!私の足にぴったりだわ!」
『………』
「…おやおや」
歓喜する継母と娘2人。
『ジェイド?靴、あの人の足にピッタリはまってるんだけど』
「まぁ、それくらいの偶然は起きて然るべきでしょうね。
ここは、ご都合展開が頻発する おとぎ話の世界などでは無いのですから」
『えぇ?夢の国なのに?随分と世知辛いのねぇ』