第16章 運命とガラスの靴
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ひょんな事から、ジェイドの新しい一面を垣間見てしまったローズ。
そして、翌朝…。
『ぅ…ん、なに…なんか、騒がしい…?』
ザワザワと、明らかに多くの人間の喧騒に眠りを妨げられるローズ。重たい瞼をなんとか持ち上げる。
「おはようございます。貴女、意外と寝汚いんですね」
朝一番に毒を吐くジェイドは、すっかり身なりが整っていた。
『だ、だって、昨日は疲れていたし、それにまだ時間も早いでしょう』
「それより、外を見て下さい」
長い言い訳をバッサリと切り捨てて、ジェイドは窓から外の様子を見るように促した。
『そうそう、なんか外が騒がし…
あぁっ!!』
彼女の瞳に映った光景。それは、王子がたくさんの従者を引き連れて、シンデレラの住む家を訪れている真っ只中だった。
『ジェイド!!寝てる場合じゃないわ!早く様子を見に外に行くわよ!』
「寝ていたのは、貴女の方ですが…」
しぶしぶジェイドは、一目散に外へ飛び出したローズの後を追うのだった。
2人はコソコソと草場の陰から様子を伺う。ここからなら耳を澄ませば、王子達の会話が聞こえる。
「そのガラスの靴は!まさに私の娘が昨日の舞踏会に履いて行った物に相違ありませんわ!」
どうやら、従者は王子と共に ガラスの靴の持ち主を探しているようだ。
差し出された靴を見て、歓喜の声を上げているのは シンデレラを虐めているという継母であろう。あのガラスの靴は、隣に並んだ娘2人の物だと言い張っている。
「ふふ、よくもまぁ堂々と あんな嘘がつける…。見上げた根性です」
『…ガラスの靴は、きっと魔法使いがシンデレラの為に用意した物。
あの2人の内のどちらかが、シンデレラかも知れないわよ?』
そう。ローズもジェイドも、シンデレラの顔はまだ直接確かめてはいないのだ。
だから分からない。あの若い女性2人が、シンデレラなのかどうか。